落下するアインシュタイン

1 無重力

  • 非慣性系では見かけの力と重力がつり合うので、非慣性系の住人は無重力を体感できる。
  • 慣性系では見かけの力が働かないので、慣性系の住人は無重力を体感できない。
  • 慣性系には無重力という状態はないのだろうか?
  • 自身で体感できないなら、自由落下している物体を慣性系で観測したらどうなるか?

2 加速度計は重力加速度を測れない

  • 宇宙(空中)では自由落下して無重力となるので、重力加速度が測れない。
  • 地上に置くと垂直抗力が働き、重力加速度と同じ大きさで逆向きの加速度が検出される。
  • 国土地理院では地上の重力加速度を精密に各地で計測している。ロケットの慣性センサとは原理が異なる計測装置で、真空円筒の中で物体を自由落下させて落下時間と落下距離を精密に測定し、重力加速度を算出する。

秤

3 重量は質量と同じ数値で、kgが使える

  • 重量は地上における重力で「力」であるが、秤で量った数値は質量と同じ。つまり、秤で量った重量は実質、質量である。
  • 体重計で量った体重が50kgの人は、質量も50kgである。その人を持上げるのに必要な力は50kgfであり、50×9.8=490Nである。
  • 質量mの物体の重量wは、その場の重力加速度g'とmの積w=m・g'で定義されるが、上記のように一般的には秤でm[kg]を量り、標準重力加速度(g=9.80665m/s^2)を使ってm・g[N]に単位変換するので、重力加速度の場所による変異の影響はない。
  • ただし、力センサで測るなら、重力加速度の場所による変異の影響が現れる。

4 慣性系における運動方程式

図-物体の位置
  • 物体の運動方程式は一般的には質量mと力Fが与えられてa=F/mで表される。加速度aは積分されて速度が、もう1回積分されて位置が求められる。
  • ここでは非慣性系(加速度運動と回転運動)の中の物体を慣性系から見たときの運動方程式を求め、非慣性系における運動方程式の導出に繋げる。

5 非慣性系における運動方程式

  • 慣性系における運動方程式から非慣性系での運動方程式を導き出し、4種の見かけの力が現れることを示す。

6 見かけの力

電車内のつり革
  • 非慣性系における運動方程式に現れた見かけの力について説明する。
    • (a) 非慣性系の並進的加速度運動による見かけの力(1 種)
      ① 並進的加速度運動による慣性力
    • (b) 非慣性系の回転運動による見かけの力(3 種)
      ② コリオリの力
      ③ 遠心力
      ④ オイラー力

7 慣性系に実在する慣性力はあるか

  • 質量mと加速度aの積で表される慣性力maは、非慣性系にのみ現れる「見かけの力」とされている。
  • 一方、慣性系においては、力を加えた結果が加速度(a=F/m)だから、加速度から力を定義するようなこと(F=ma)はあり得ないので、慣性力という言葉は必要がない。
  • しかし、用語の統一という観点から、maを非慣性系では「見かけの力である慣性力」、慣性系では「実在する慣性力」としても良いように思う。